【はじめに】
NTRの新たな境地を開拓したと言われる「カラミざかり」
この作品は、カラミざかり以降のNTR漫画に大きな影響を与えたといっても過言ではない。
ここではなぜカラミざかりがヒットしたのかを考察したい
そして後発のNTR作家は何を見習うべきなのかを説明したい
あなたのNTR漫画が売れない理由が書いてあるかもしれない
【結論】
結論から言ってしまうと、カラミざかりがヒットした一番の理由は「BSS」にあると思われる
今までNTR界隈にほぼ存在しなかったNTRを完璧な形で漫画にしたことが大きい【BSSとは何か】BSSとは、Boku ga Saki ni Suki dattanoni (ぼくが先に好きだったのに)という意味で
彼女や妻ではない関係の女性を、他の男に取られてしまうことである
NTRとBSSの区別の定義については、人によって異なっている
NTRは、彼女や妻を寝取られること
BSSは、交際関係未満の女性を寝取られること
と定義する人もいる
しかし、このブログでは、
NTRは、好意を抱いている人を寝取られたという感情を指す概念
BSSは、その中で「交際関係ではない女性が寝取られたシチュエーション」
と定義する
NTRという大きなカテゴリがあり、その中の一部としてBSSが存在すると考えているわけだ
なぜならば、過去のNTRの名作と呼ばれる作品の中には、主人公とヒロインが交際関係ではなかったものが多数ある
・MUSA
・手と手つないで
・テンゴロ
・ひなたネトリズム
これらはNTRと認識されているが、シチュエーションとしてはBSSである
再度説明するが
NTRとは「好意を抱いている人を寝取られたという感情」を指す概念であり
BSSの「彼女や妻ではない人が寝取られた」というのは、その中の限定されたシチュエーションにすぎない
【解説】
カラミざかりがヒットした最大の理由はBSSにあると言った。
ここではなぜBSSがヒットしたのかについて説明したい
上質なNTRを書くには、基本的なルールがある
http://ntrhakase.blog.2nt.com/blog-entry-2.htmlこのルールを満たすために特に重要なのが「ヒロインは読者にとって価値のある存在である」だ
BSSでない作品の場合、彼女や妻が寝取られることになるが、彼女や妻が寝取られるということは基本的には浮気・不倫になる
ところが浮気や不倫をしてしまうと、男性の中には「価値のない女性」「ただのビッチ」と女性を格下げしてしまう人がいる
そうなると、「ヒロインは読者にとって価値のある存在である」という前提が崩れてしまう
これを
NTRのジレンマと私と読んでいる
ところがBSSでは、ヒロインは彼女や妻ではないので、他の男に抱かれても浮気や不倫にならない。
その結果、NTRのジレンマを解決することが出来ており、読者には依然としてヒロインの価値が高い状態になりやすい
実際のところ、この漫画の登場ヒロイン達はそれほどまで貞操観念が強くない
というのも、新山さん自身が「好意を抱いている貴史とのSEX」を経験した後に、何の抵抗もなく「主人公とのSEXを積極的に行おうとしている」ことと「貴史と飯田さんのSEXを許している」という事実がある
しかしBSSであるがゆえに、ヒロインの貞操観念が多少緩くても割と許される空気を作りやすくなっている
【具体的にカラミざかりがしたこと】
いかにBSSが「彼女と妻以外なので浮気や不倫ではない」と条件を緩和できたとしても
ヒロインが性に緩い女性であれば、男性読者は「ヒロインはビッチなので価値がない」と食いつかなかったと思われる
そこでカラミざかりが行った工夫がいくつかある
それは「13-17ページにヒロイン飯田さんのオナニーを用意した」である
これにより飯田さんが「おとなしい女性ではあるが、性に興味がある」という前提が作られた
つまり場の雰囲気に流されても仕方がないと読者に思わせる前提を用意したのである
次の工夫は、いきなり吉野貴史(間男)と飯田さんがSEXしないようにしたことだ
飯田さんから見ても、読者から見ても、いきなり貴史と飯田さんがSEXをしてしまうと「飯田さんが性に奔放すぎる=ヤリマンすぎる」というレッテルを貼られてしまう
これは「ヒロインは読者にとって価値のある存在である」という前提を揺るがしてしまう
そこで、貴史と飯田さんのSEXに違和感をなくすために、サブヒロインである新山さんと貴史のSEXを最初に行う。
これにより「飯田さんが流されるための場の空気」を作り出すことに成功し、SEXのハードルを大幅に下げている
そしてこれが「飯田さんのオナニー描写」と上手くマッチするのである
そして最後に行った工夫が「主人公も巻き込む」である。
読者は主人公と自分を重ねているので、主人公の行動があまりにも辻褄が合わないと違和感を覚えてしまう
読者は主人公に「早く貴史と飯田さんのSEXを止めろ!」という思いを持っているので、主人公が棒立ちで眺めているだけでは「流石に主人公何もしなさすぎだろ」という感想が生まれてしまう
そこで主人公もSEXに巻き込んである程度美味しい思いをさせてしまうことで、読者に「この状況なら止められなくても仕方がない」という認識をもたせている。
以上の工夫により、無理のない寝取られSEXが生まれている。
これがカラミざかりがヒットした理由である。
つまり、
カラミざかりとは「清流のようなよどみのないNTR」なのであるもちろん、この清流を可能にしているのは、桂あいり先生の高い画力・演出力・構成力があってこそである
桂あいり先生はやはり天才なのである
【何を真似すればよいのか】カラミざかりから学ぶべきは「寝取られる前の下地をしっかりと描くこと」である
いかに無理のないNTRを描くかを考えていくことは、NTRが作品の全体の質を向上させる
巷にある多くのNTR作品あるあるなのが
「今まで貞淑だった女性が、突然自暴自棄になったかのように寝取られる」である
読者が違和感を抱くと、ヒロインの価値を落とすことになり、ひいては作品自体の質に影響を与えてしまう
そうならないように、カラミざかりをベースにどう描けばよいかを考えてみよう
・寝取られる前に、ヒロインの心理的描写を描く(カラミざかりでは、飯田さんのオナニーすなわちヒロインの性への興味が描かれた)
・寝取られる前に、寝取られるにふさわしい場の空気を作り出す(カラミざかりでは、新山さんと貴史のSEXを先に行い、エッチな雰囲気を作っている。そしてこれが性の興味を持つ飯田さんに対してSEXへの抵抗感を下げることにつながる)
・寝取られを阻止しようとする主人公と読者を動けなくする(カラミざかりでは、主人公と新山さんと絡めさせ、飯田さんと貴史のSEXのを止められないようにしている)
これを超端的に説明すると
まずヒロインが「欲しい物」を描き、次にヒロインが無理なく「欲しい物」と「間男のSEX」を交換できる場を用意しよう
ということだ
カラミざかりでは、飯田さんのオナニーによって、飯田さんが「姓の知識・経験」を求めていることが分かる
飯田さんが貴史とSEXしてしまったとしても、これを手に入れるためだったと読者は理解・納得できる
これが無理のないNTRになっている
別の作品の紹介になって申し訳ないが
藤原俊一先生の「憧れの女」という作品で、ヒロインのサオリさんが間男に体を許したとき
その理由は「主人公の浮気相手に勝ちたいから。主人公を自分だけのものにしたいから」という主人公への一途な思いがあった
結果、間男に体を許したとしても、読者は「悪いのは浮気した主人公」「一途なヒロインの価値は変わらない」と考えた
結果、NTR作品として極めて高い質をキープし続けることが出来、名作と呼ばれた
みなさんがNTR作品を描く際は、
・SEXと交換しても、ヒロインの価値を貶めない等価なものを用意する
・それをヒロインに欲しがらせる
・そして最後に「ヒロインの欲しい物」と「間男とのSEX」を交換させる
・主人公にその交換を止められないような状況を作るを意識して作品を作ってみて欲しい